

各疾患をテーマに取り上げ、岡山県内の専門医に聞く。初回は糖尿病。川崎医科大付属病院副院長の加来浩平・同大内科学教授(内分泌・糖尿病)に、変わる診断基準や最新治療について聞いた。
―今年、診断基準が変わるのですか。
1999年以来11年ぶりに変わります。5月に岡山市で開かれる日本糖尿病学会の学術集会で、新しい診断基準が承認される予定です。
これまで血糖値と経口ブドウ糖負荷試験で診断していました。その検査項目は残り、ヘモグロビンA1cを加えます。A1cは、過去1、2カ月の血糖の平均値を表し、主に治療評価に用いられ、診断では補助的な項目だったのですが、血糖値などと同列になります。これは世界的な医学の流れでもあります。
―どのような効果が期待されますか。
患者さんを幅広く掘り起こせる可能性があります。厚生労働省が推計している患者数がありますが、あれはヘモグロビンA1cを基に出しています。A1cが6・1%以上を「糖尿病が強く疑われる人」としていますが、今度は「糖尿病」と言い換えてよい。新しい診断基準がそうなりますから。
また、糖尿病初期では早朝空腹時の血糖値は高く出ず、食後に高く出る。だから見落としがあったのですが、食後の値も反映するA1cにより、見落としをなくせます。あなたが検査を受けるとして「いい数値を出そう」と思うと、2、3日前から節制し、ちょっとお酒も控えとくかというの、あるでしょう。患者さんの心理はそうですよ。でもA1cはごまかしが利かない、見逃さない。
―最近、薬物治療で注目されている「インクレチン」とは何ですか。
インクレチンは、食事を取ると消化管から出るホルモンの中で、 膵臓 ( すいぞう ) に働いてインスリンの分泌を促進するホルモンの総称です。
糖尿病はインスリンの働きが足りない状態ですから、インクレチンが治療薬にならないかという発想が出た。ところが、インクレチンは分解酵素「DPP―4」によって分解されてしまう。だから分解酵素の働きを抑える薬をという発想で、DPP―4阻害薬の第1号が昨年12月に発売されました。2型糖尿病の経口薬です。飲むことによってインクレチンを守り、インスリンの働きを高めます。この薬が良いのは、血糖を上げるホルモン「グルカゴン」の働きを同時に抑えますが、血糖が高いときだけに働き、血糖が下がると働かない。低血糖の問題が起きない。
―糖尿病治療・研究をされて30年になるご自身にとって、この病は撲滅の対象ですか。
そうですね。でも、できないと思う。人間の老化に伴って起こる疾患ですから。老化によって膵臓の機能も落ちる。長生きをすれば糖尿病の診断基準に合致する人は増えていくと思うのです。重要なのは病を進行させないこと。糖尿病が良くないのは合併症が起こるからです。だから、合併症に至らせないように血糖、血圧、脂質、体重を制御する。その前に発症を予防する、一次予防です。
―医師の言葉は患者の励みにもなります。患者への言葉を。
「決して慢心せず、なおかつ、あきらめず」―。今、私どもは約3千人の患者さんを診ています。糖尿病は、病との付き合いが何十年にもわたり、患者さんは時々、何も起きていないし、脳卒中など起きないだろうと油断してしまう。だから慢心はいけない。かと言って、悲観的になってもいけない。生活の質が高まりません。その辺のさじ加減を、常に患者さんと話しながら使い分けています。
もう一つ、「知識のある患者ほど長生きできる」―。米国にある糖尿病専門施設の創始者の言葉です。大切なのは医師が病気についてどんどん知識を与えることです。患者さんは病気を知れば知るほど、自分がやらなきゃと闘病意欲がわく。治療は患者さんがやってくれる。主役は患者さんなんですね。
病のあらまし
糖尿病は、国民病といわれて久しい。厚労省の「2007年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病の疑いがある成人は推計2210万人、4.7人に1人の割合。1997年から10年間で1.6倍、06年調査と比べて340万人の大幅増だった。同省は「食生活の乱れや、運動不足がなかなか改善されていないのが大きな要因」とした。
健康な人は、血液中のブドウ糖の量(血糖値)が上がると、その変化を膵臓が感知してインスリンというホルモンを分泌し、血糖値をちょうどよい範囲に調節する。糖尿病は、インスリンの働きが足りないためブドウ糖が有効に使われず血糖値が普通より高くなっている状態をいう。
血糖値が高くなると、(1)尿に糖が出ると同時に水分も出て、尿が多くなる( 多尿 ( たにょう ) )(2)多尿のため体が脱水状態になり、のどが渇く( 口渇 ( こうかつ ) )(3)のどが渇くため水分をたくさん取る( 多飲 ( たいん ) )―などの症状が見られ、糖尿病を疑ってみる必要がある。
糖尿病を治療せず放っておくと、別の症状や病気(合併症)が起きる。例えば、脳卒中や心筋 梗塞 ( こうそく ) (大血管症)の約7割は糖尿病やその予備軍から起こっている。また足の神経に障害をもたらし、しびれや痛みを感じるようになったり、目の奥にある網膜の細い血管や、細い血管の集まりである腎臓に障害が出て、最終的には失明したり、人工透析が必要になることもある(細小血管症)。
糖尿病は、原因によって「1型糖尿病(インスリンが分泌されなくなる)」「2型糖尿病」「その他の特定の原因による糖尿病」「妊娠糖尿病」の4種類に分けられている。
日本では、95%以上が2型糖尿病。40歳以上の成人に多く、インスリンの働きが悪くなったり(インスリン抵抗性)、膵臓の細胞の働きが悪くなって十分な量のインスリンが作れなくなる(インスリン分泌不全)ことで発病すると考えられている。
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内分泌・代謝 糖尿病内科 糖尿病 県南西部 研究開発 健康、予防、予後 |
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糖尿病 川崎医大附属病院 川崎医科大 加来浩平 ヘモグロビンA1c インクレチン |
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第23回 乳がん おおもと病院 山本泰久理事長・名誉院長
第22回 悪性リンパ腫 岡山労災病院 矢野朋文・第2内科部長
第21回 緩和ケア 岡山済生会総合病院 石原辰彦主任医長
第20回 乳がん 川崎医科大付属病院乳腺甲状腺外科・園尾博司部長
第19回 うつ病 万成病院 小林建太郎理事長・院長
第18回 統合失調症 慈圭病院 武田俊彦副院長
第17回 重症心身障害児・者の医療 旭川荘療育センター児童院 片山雅博院長代理
第16回 尿路結石 岡山中央病院 入江伸医師
第15回 感染制御 光生病院 吉本静雄副院長
第14回 手の外科 笠岡第一病院 橋詰博行院長
第13回 小児整形外科の三大疾患 旭川荘療育センター療育園 小田浤院長
第12回 大腸がん おおもと病院 磯崎博司院長
第11回 膀胱がん 松田病院 森岡政明診療部長
第10回 皮膚がん 川崎病院皮膚科 荒川謙三部長(院長補佐)
第9回 未破裂脳動脈瘤 岡山旭東病院 吉岡純二診療部長
第8回 心筋梗塞 心臓病センター榊原病院 山本桂三副院長
第7回 人工関節(MIS) 岡山労災病院人工関節センター 難波良文センター長 
第6回 食道がん 岡山大病院消化管外科 猶本良夫科長
第5回 肺がん 岡山赤十字病院 渡辺洋一副院長
第4回 大動脈解離、大動脈瘤 国立病院機構岡山医療センター心臓血管外科 岡田正比呂医長
第3回 胃がん 倉敷中央病院 小笠原敬三院長
第2回 肝がん(外科手術) 岡山済生会総合病院 三村哲重副院長
第1回 糖尿病 川崎医科大付属病院 加来浩平副院長
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院長室から
病院長
角田司
救急医療に力、ヘリも運用 |
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診察室から
副院長
加来浩平
患者の意欲高める治療を |
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ナースセンターから
看護部長
千田美智子
「患者のため」日々実践 |
http://www.kawasaki-m.ac.jp/hospital

倉敷市松島577

086-462-1111

電車:JR山陽本線・伯備線にて中庄(なかしょう)駅下車徒歩約10分(岡山駅→「中庄(なかしょう)駅」12分、倉敷駅→「中庄(なかしょう)駅」5分)
車:山陽自動車道 倉敷ICを降りて約10分、瀬戸中央自動車道 早島ICを降りて約10分





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