

日本人女性の約20人に1人がかかる、といわれる乳がん。早期発見に向けた取り組みや治療の最前線について、川崎医科大付属病院(倉敷市松島)乳腺甲状腺外科の園尾博司部長(同大教授)に聞いた。
―乳がんは早期発見が大切と言われます。
乳がんは誰もがかかる病気。患者の4分の3は自己発見です。ただ、定期検診で見つかるケースに比べて進行していることが多い。手で触って分かるようになるのは、がんが1センチ以上になってから。手で触るだけでは完全に早期のがんを見つけることはできません。1センチ以下で見つかれば、ほぼ完治します。ところが、2センチになると、1割ぐらいは亡くなってしまいます。
岡山県内の乳がん検診の状況について調べたデータがあります。毎年検診を繰り返し受けている人と隔年の人を比べると、毎年の人は71%が早期がんで見つかっていますが、2年に1回では50%の人しか早期で見つけることができていません。また視触診だけだと、早期がんの発見率が45%なのに対して、マンモグラフィーを併用した場合は71%に向上します。
岡山県では2000年から「岡山方式」として「毎年検診」を呼び掛けていますが、受診率は低迷しています。多少の費用がかかっても40歳以上の方には、マンモグラフィー検診を毎年、受けていただきたい。
―がんが見つかったら、外科手術を行うのですか。
原則、外科手術です。現在、6割が乳房温存術、残りの4割が乳房切除術です。以前は乳房切除術の方が多かったのですが、2003年からは乳房温存術が主流になっています。両者の生存率は同じです。
乳房を温存できるがんの大きさは、おおむね3センチまで。3センチは500円玉の大きさです。定期的にセルフチェックしていた人は平均2・1センチで見つかっています。たまに触る人と、まったく触っていない人はほぼ同じで、見つかった時の大きさは平均3・3センチ。つまり、この大きさでは乳房は残せません。普段から自分で意識して触ることが大切です。
乳房を温存した場合、再発を防ぐために大事なことが二つあります。一つは顕微鏡的にがんをきちんと取りきること。切除する部分を3カ所ほど顕微鏡で見て、がんが広がっていないか確認しながら手術をします。
もう一つは術後の放射線治療です。放射線治療は週5回、5週間続けるため、患者さんの負担が大きいことが課題です。遠方に住む人が毎日、通院するのは大変。そこで、最近は手術の時や術後に放射線を当てるなど、短期で行う方法も試みられています。
また、がんが1センチ以上であれば薬物療法の対象になります。再発の可能性がゼロでなく、他の臓器への再発が怖いからです。ホルモン剤、抗がん剤、分子標的薬剤の3種類あり、ホルモン剤だけの場合もあれば、ある程度進行していれば抗がん剤を併用します。もちろん、分子標的薬剤の適応があれば、三つとも併用することもあります。
―乳房の再建を望む患者は多いと思いますが。
乳腺を全摘した場合、すべての医療機関で乳房の再建ができるわけではありません。以前は背中の筋肉を使って胸を膨らませていましたが、この手術は5〜6時間かかります。現在は、ティシュエキスパンダー(組織拡張器)を使う方法が一般的です。
乳腺を全部切除した後、大胸筋の下にティシュエキスパンダーという袋を入れ、生理食塩水を少しずつ注入していきます。半年ほどかけて皮膚を伸ばして、乳房の形を整えてから、シリコンに入れ替える手術をします。この入れ替え手術は保険適用にならず、自己負担で約80万円かかることがネックです。
―乳がん手術では腕が腫れるといった後遺症があると聞きます。
乳がん手術でリンパ節を切除した人の1〜2割に、腕の腫れ(リンパ浮腫)が起こることがあります。がんが最初に入るリンパ節だけを取り、顕微鏡で調べ、転移がなければそれ以上取らないことで、この症状を避けることができます。「センチネルリンパ節生検」と呼ばれる検査で、色素とか放射能を使ってがんを探します。今年の4月に保険適用になりました。
―患者のQOL(生活の質)向上につながる支援も欠かせませんね。
患者さんの心のケアは非常に大切です。当科の患者さんを中心に1985年、患者の会ができ、それ以来ずっと顧問をしています。活動としては、年1回のオープン参加の講演会、年1回の親睦(しんぼく)旅行が25年間も続いています。5年前からは、他の病院で手術した患者さんにも参加してもらい、3カ月に1回、悩み相談会を開いています。相談は治療のことや薬のことなど、何でもいいのです。毎回、20〜30人集まっています。
病のあらまし
乳がんは乳房の乳管(乳が通る管)に発生する。罹患(りかん)率は30歳代から高くなり、40〜50歳代がピーク。近年は60歳以上の高齢者で増加が目立つ。まれだが、男性の乳がんもある。
乳がんの発症には女性ホルモンの一つ「エストロゲン」が関係する。エストロゲンは、乳房の発達などに関係し、がん細胞を増殖させる。
リスク要因として、初経が早い▽出産歴がない▽高齢での初産▽授乳歴がない▽閉経が遅い▽家族に乳がん患者がいる▽閉経後の肥満―などが挙げられる。
早期発見が大切で、自己検診と定期検診が欠かせない。一般的に乳房のしこりが1センチぐらいになると、自分で注意深く触診すれば分かるようになる。
セルフチェックは定期的に行い、月経が終わってから1週間前後の乳房が張っていない時期がよい。人さし指から薬指まで3本の指をそろえ、指の腹で2〜3センチの円を描きながら乳房全体をくまなく、ゆっくりと調べる。左右それぞれ3分程度かけて、じっくりと行う。
定期検診の際、視触診に加え、マンモグラフィーを併用することで早期発見の可能性は一段と高くなる。乳房を挟んで圧迫し、エックス線撮影する検査で、触診では見つからない小さながんを見つけることができる。
国の指針では40歳以上は2年に1度、視触診とマンモグラフィーを併用すべきとするが、岡山県は独自に30歳以上に視触診、40歳以上はマンモグラフィー併用を毎年実施する「岡山方式」を打ち出している。
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乳房 外科 がん 県南西部 女性 |
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乳がん 川崎医大附属病院 園尾博司 マンモグラフィー |
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第23回 乳がん おおもと病院 山本泰久理事長・名誉院長
第22回 悪性リンパ腫 岡山労災病院 矢野朋文・第2内科部長
第21回 緩和ケア 岡山済生会総合病院 石原辰彦主任医長
第20回 乳がん 川崎医科大付属病院乳腺甲状腺外科・園尾博司部長
第19回 うつ病 万成病院 小林建太郎理事長・院長
第18回 統合失調症 慈圭病院 武田俊彦副院長
第17回 重症心身障害児・者の医療 旭川荘療育センター児童院 片山雅博院長代理
第16回 尿路結石 岡山中央病院 入江伸医師
第15回 感染制御 光生病院 吉本静雄副院長
第14回 手の外科 笠岡第一病院 橋詰博行院長
第13回 小児整形外科の三大疾患 旭川荘療育センター療育園 小田浤院長
第12回 大腸がん おおもと病院 磯崎博司院長
第11回 膀胱がん 松田病院 森岡政明診療部長
第10回 皮膚がん 川崎病院皮膚科 荒川謙三部長(院長補佐)
第9回 未破裂脳動脈瘤 岡山旭東病院 吉岡純二診療部長
第8回 心筋梗塞 心臓病センター榊原病院 山本桂三副院長
第7回 人工関節(MIS) 岡山労災病院人工関節センター 難波良文センター長 
第6回 食道がん 岡山大病院消化管外科 猶本良夫科長
第5回 肺がん 岡山赤十字病院 渡辺洋一副院長
第4回 大動脈解離、大動脈瘤 国立病院機構岡山医療センター心臓血管外科 岡田正比呂医長
第3回 胃がん 倉敷中央病院 小笠原敬三院長
第2回 肝がん(外科手術) 岡山済生会総合病院 三村哲重副院長
第1回 糖尿病 川崎医科大付属病院 加来浩平副院長
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院長室から
病院長
角田司
救急医療に力、ヘリも運用 |
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診察室から
副院長
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看護部長
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「患者のため」日々実践 |
http://www.kawasaki-m.ac.jp/hospital

倉敷市松島577

086-462-1111

電車:JR山陽本線・伯備線にて中庄(なかしょう)駅下車徒歩約10分(岡山駅→「中庄(なかしょう)駅」12分、倉敷駅→「中庄(なかしょう)駅」5分)
車:山陽自動車道 倉敷ICを降りて約10分、瀬戸中央自動車道 早島ICを降りて約10分





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