
人体はいったんホメオスタシス(恒常性)が崩れてしまうと、連鎖反応のようにどんどん悪い方へ転がってゆくもののようである。極めて柔軟なシステムは、同時に、とても繊細なバランスの上に成り立っている。
2008年7月14日。フランス・パリの国際学会から帰国した岡山大病院肝移植チームのチーフ八木孝仁医師と吉田龍一医師は、時差ぼけも解消できないうちに、一番に診察に駆けつけてくれた。
グランの点滴静注が続いているが、白血球数はなかなか上がらない。感染症を警戒し、簡易無菌室に入ることになった。
可搬式ラックがごろごろと運び込まれた。ベッド上をすっぽりビニールカーテンで覆い、 集塵 ( しゅうじん ) フィルターのファンを回す。床面にはすき間があり、あくまで「簡易」だけれど、「隔離」の気分を味わうには十分だ。
送風音ががなり、波打つビニール越しにテレビを見ていると、透明の 檻 ( おり ) から一生出られないような気がしてきた。急性白血病などの血液がんを患う方は、きっと同様の思いをされるに違いない。
人ごとではない。私は白血球だけでなく、赤血球や血小板の数も基準値より大幅に少ない「汎血球減少」の状態にあった。ひょっとすると、原因は血液がんかもしれない。
吉田医師が「念のために血液・ 腫瘍 ( しゅよう ) 内科の先生に診てもらいましょう」と紹介してくれた時点で、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群という病名が頭をよぎった。どちらも血球が育つ大本の骨髄多能性幹細胞に異常を来す難病(特定疾患)である。
肝移植はさまざまな診療科が連携する学際的医療であることは知識として持っていたが、血液・腫瘍内科にまでお世話になるとは思いもしなかった。コーディネーターの保田裕子さんに「全部(の合併症を)経験してるね」と慰めてもらったところで、ちっとも気は晴れない。
次にやる検査が予想できた。怖くてたまらない。マルク= 骨髄 ( こつずい ) 穿刺 ( せんし ) 。胸骨または腸骨に針を刺して少量の骨髄液を抜き、顕微鏡で細胞を観察するのだ。
痛みだけなら、局所麻酔でこらえられる。なんとしても耐え難いのは、シリンジに骨髄液を吸い上げる時。以前、岡山労災病院(岡山市南区築港緑町)で受けたことがある。胸骨をバキバキと砕かれ、心臓をわしづかみにされたような感覚が、トラウマ(心的外傷)となって残っている。
今回は腸骨から採取するという。観念してうつぶせになり、おしりを突き出すような姿勢で丸まった。
骨髄穿刺はかなりの力仕事らしい。ドクターは何度も気合を入れ、穿刺針をねじ込もうとするが、硬くてなかなか奥へ進まない。とうとう骨髄液はあきらめ、生検針に取り換えて組織片を採取する羽目になった。
汗をふきながら先生が見せてくれたシリンジに、5ミリほどのピンク色の組織片が入っていた。この検査を何度も繰り返す血液がんの患者は本当に大変だ。もっと侵襲の小さい検査法が開発されないものだろうか。
メモ
骨髄移植 白血病とともに重症の骨髄異形成症候群、再生不良性貧血などが骨髄移植の対象となる。移植したドナーのリンパ球が新しい宿主を異物とみなして攻撃しないよう、HLA(ヒト白血球抗原)が一致するドナーから提供を受ける必要がある。多くの場合、骨髄採取は全身麻酔下で行われる。今年2月末現在、日本骨髄バンクに356081人がドナー登録し、累計11459例の非血縁者間移植が実施された。
![]() |
消化器・肝臓・胆嚢・膵臓 感染症 県南東部 男性 青壮年 健康、予防、予後 |
![]() |
肝硬変 岡山大学病院 八木孝仁 吉田龍一 保田裕子 骨髄穿刺 学際的医療 侵襲 |
| Tweet |

55 見えない壁 手術機に看護師転身 
54 マスカットの会 悲喜共有目指し始動 
53 小さな友達 感動の体験発表 
52 出会い 患者支援で慈善公演 
51 1級障害者 薬飲まねば肝臓廃絶 
50 自戒の輪 腹水解消も服薬続く 
49 ステント 肝静脈支える金剛杖 
48 袋小路 血管内手術繰り返す 
47 胆汁漏れ ほころび見つけ治療 
46 PET リンパのがん化疑う 
45 簡易無菌室 骨髄穿刺におののく 
44 再入院 白血球減り再び腹水 
43 家庭内「隔離」 特別扱い 不満募らす 
42 ムンテラ 100点目指さず退院へ 
41 バルーンカテーテル 「血管ナビ」で患部へ 
40 ミクロの決死圏 SF世界の手術現実に 
39 最大のピンチ 腹水漏れ血管造影 
38 過小グラフト 再生しながら重労働 
37 薬のデパート 10種類服用で“満腹” 
36 一般病棟へ 点滴刺し替えに難渋 
35 森田院長インタビュー 数こなし「臨床力」を 
34 大遠征 一般病棟の弟見舞う 
33 胆道閉鎖症 「みとり」考えたくない 
32 8100ミリリットル ICU脱出阻んだ腹水 
31 パルス 拒絶反応を未然回避 
30 レビンチューブ 解放後食事し生実感 
29 コード人間 絡まり寝返り打てず 
28 どんでん返し がん 間一髪で血管外 
27 パンドラの箱 希望与えた基準変更 
26 ミラノの壁 手術阻む8センチのがん 
25 クリスマスの誓い がん再発「後悔ない」 
24 長い長い闘い つらいC型肝炎治療 
23 デンバーシャント 想定外の「最終兵器」 
22 新世界より 目覚めは第2誕生日 
21 出血との闘い 血液を総入れ替え 
20 血管吻合 超繊細な針仕事 
19 グラフト 命つなぐ339グラムの左葉 
18 執刀 重い役割担う麻酔医 
17 手術台 麻酔直前またサイン 
16 IC “神の摂理”に背いても 
15 敵は身中にあり 頭から足先まで検査 
14 待機の日々 同僚に手術記録を依頼 
13 弟 奇跡の生還思い返す 
12 社会的な死 「苦悩」分かち合う 
11 大病人 「重篤」の現実自覚 
10 ナッシュ 油断できない脂肪肝 
9 保険適用 生存率高いと無理? 
8 ドナー希望 両親の申し出拒む 
7 遠い世界 手術考えないと主張 
6 難治性 腹水穿刺に涙こぼす 
5 食道静脈瘤 “爆弾”抱え 戦々恐々 
4 暗澹たり 回復不能の「肝硬変」 
3 カエル腹 腹水たまり 体重が急増 
2 まさか 日本初を取材 18年後自ら 
1 二つの手術室 刻まれた「ベンツ紋章」 
![]() |
![]() |
|
院長室から
病院長
槇野博史
高度な医療をやさしく提供 |
|
ナースセンターから
副病院長・看護部長
保科英子
社会の期待に応えたい |
http://www.hsc.okayama-u.ac.jp/hos/

岡山市北区鹿田町2-5-1

086-223-7151

岡山駅バスターミナルから「12」・「22」・「52」系統の岡電バス又は 「(大学病院経由)新岡山港」行きの両備バスで7分「大学病院前」下車。
岡山駅タクシー乗り場からタクシーで約5~10分。
岡山駅前から「清輝橋」行き路面電車で12分「清輝橋」下車西へ徒歩5~10分。




|
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
日 |
祝 |
900-1200 |
● |
● |
● |
● |
● |
1200-1700 |
● |
● |
● |
● |
● |