臨床力強化へ「参加型」実習 岡山大医学部 
学生にやりがい、自覚 取り組み本格化

山根助教(中央)の指導を受けながら患者の状態をみる大平さん(右)。学生たちは自覚と責任を感じながら患者と向き合う=岡山大病院
山根助教(中央)の指導を受けながら患者の状態をみる大平さん(右)。学生たちは自覚と責任を感じながら患者と向き合う=岡山大病院

 岡山大医学部(岡山市北区鹿田町)が「臨床力」強化を狙いに、学生に積極的に診察などをさせる臨床実習を展開している。医師の仕事をはたから見ることが多かった従前に比べ、患者とコミュニケーションをとって医療行為も行う「参加型」が特徴。本年度は実習を行う学生を「Student Doctor(スチューデントドクター)」に認定する取り組みを開始し、学生のやりがいや自覚にもつながっている。

 7月中旬、岡山大病院(同所)の呼吸器外科病棟。

 「傷は痛みます?」

 白衣の5年、大平安希子さん(22)が、前日に肺がん手術をした女性(66)の胸に手を当てる。聴診器で呼吸を聞き、血圧も測る。

 大平さんは主治医らのチームの一員として患者5〜10人を担当。入院してきた患者に会って症状や経緯、服用している薬などを聞き取る。診察内容は学生用カルテに記入。手術にも助手として参加し、カンファレンスでは内容をリポートにまとめて発表する。

 「患者さんとじかに接するので勉強が欠かせない。忙しく責任も重いけど、やりがいがある」と声を弾ませる。

 国家試験に向け、5、6年で24診療科を回る臨床実習。大平さんを指導する山根正修助教は「以前は後ろで見ているだけの実習が多かった」と指摘する。

大学間で格差

 国の指針では、診察や検査など、指導医の下で行われる臨床実習で学生に許容されている医療行為は多い。

 文部科学省の「医学教育カリキュラム検討会」が昨年5月にまとめた報告書では「臨床実習の内容・程度が大学間、診療科間で格差がある」と指摘。医療の高度化への対応や患者の全人的理解、使命感、コミュニケーション能力を身に付けるため「診療参加型実習」の促進を、各大学に呼び掛けている。

 同大では先駆けて2008年秋、実習指導に当たる中堅医師らで「臨床系教育企画委員会」を発足。毎月集まって問題点を挙げ、改善を進めてきた。

 産科婦人科では昨年から可能な医療行為を指導医に示して実習を見直した。臨終に立ち会ったり、流産した女性に寄り添う体験をした学生もいる。「研修医になると覚えるべき医療知識は多い。今のうちに患者との関係などを学んでおくのは大切」と同科指導医の関典子助教。

 スチューデントドクターは、各科の実践的な実習を医師教育全体に広げる狙いで導入。学生に自覚を持たせると同時に、カリキュラムを見直した。

 「コミュニケーションが苦手な学生が、患者と話して自信を付けているようだ」と関助教。実習期間が終わっても、担当した患者の様子を見に来る学生もいるという。

育てる意識

 「教える側」の意識改革も図ろうと、各診療科で実習評価表を作成。「身体診察」「コミュニケーション」など項目ごとに具体的に何をどう評価するかを示して点数で評価し、卒業試験の成績にも反映させるようにした。

 「大学は伝統的に研究や診療に比べて教育が軽視されがちだった」と同大教務委員長の松川昭博教授。「卒業までに研修医レベルの基本臨床能力を取得させるのが目標。まだ教員間で温度差もあるが、社会で必要とされる医師を大学が責任を持って育てるという意識を浸透させていきたい」と話している。

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 スチューデントドクター 岡山大が全国共通の学力、技術試験に合格し5年に進級した医学生を認定。新カリキュラムでは、従前は6年の7月まで全診療科を一巡していた「基本臨床実習」を5年の1年間とする。一方、6年の選択実習の枠を拡大し、地域の病院に出向く「地域医療」など4科目の臨床実習を計16週間行い、より専門的な知識や技術を養う。

(2010/7/28)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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