インフルエンザの予防法を探る

 寒さが厳しく、乾燥した冬季はインフルエンザが流行しやすい。この数年、インフルエンザの患者数は、1月下旬にピークを迎え、3月まで続くパターンを示している。この冬も同じようなパターンになるのだろうか。これまでの気象状況を見ると、この冬はことのほか寒さが厳しくなっている。こうした環境下では、インフルエンザが一層流行しやすくなる。インフルエンザ対策の基本は予防接種だが、そのほかどのような対策があるのか探ってみた。

マスクで鼻、喉温かく
東京女子医大の玉置淳教授
東京女子医大の玉置淳教授
ヒトの気管支の電子顕微鏡写真。毛のような構造が線毛(東京女子医大・玉置淳教授提供)
ヒトの気管支の電子顕微鏡写真。毛のような構造が線毛(東京女子医大・玉置淳教授提供)

 インフルエンザが流行する季節がやってきた。例年、本格的な流行が始まるのは年明けからだ。

 年末年始の休みが終わり、再び学校に児童生徒が集まると、感染が広がり、流行の勢いが増しやすいことは、よく知られている。

 これまでのインフルエンザウイルスの検出状況からすると、昨シーズンと同様の傾向になるとみられ、A香港型を中心に1、2月をピークにはやり、春先になってB型がはやるパターンになりそう。2009年にはやって騒がれたパンデミック型も検出されているが少なめだ。

 東京女子医大第一内科の玉置淳教授(呼吸器内科)は「冬本番を迎え、寒さや乾燥でインフルエンザウイルスが増殖しやすい環境になっているが、低温と乾燥が続く季節は、体の方も粘膜バリアーの機能が低下し、吸い込んだウイルスが増殖しやすい状態になりがち」と指摘する。

 通常は、外から吸い込んだインフルエンザウイルスや細菌が鼻や気道の粘膜に付着しても、粘膜に生えている線毛に捕らえられ、線毛の運動によってできた粘液の流れに乗って口の方に運ばれ、たんとして外に排出される。体を守る生体防御システムの一つだ。

 線毛は肉眼では見えないが、長さは1ミリの100分の1ぐらい。鼻から喉、気管支の奥まで生えており、1秒間に10~15回も小刻みに動いている。

 「しかし、気温が低下すると線毛運動も著しく低下する。また乾いた空気にさらされるだけで線毛の運動が落ちることも分かっている。乾燥で粘液の粘り気が増し、線毛の運動が障害を受けるからだ」

 そういった機能が低下した状態のときにウイルスが入ってくると、粘膜に長くとどまって増殖し、細胞の中に入り込む結果、感染が起きてしまう。

 「だから、インフルエンザウイルスなどの感染を防ぐには、まず手洗いが不可欠だが、さらにマスクを使えば鼻や喉を温かく湿潤に保てるので、活発な線毛運動を維持できる。生体防御には有効だ。体を温めたり、部屋の温度調節も大事」

 子どもが風邪やインフルエンザのとき、嫌がらなければマスクをして寝かせることも推奨されている。

 また加齢によっても線毛運動が低下するので、高齢者は注意した方がいいという。

 インフルエンザが流行期に入ったら、人混みを避け、帰宅後はよく手を洗い、うがいをすることが大事だ。

 玉置教授は「あと線毛運動にいいことといえば、十分な睡眠と栄養。低栄養だと線毛の運動も悪くなる。うがい薬は、喉に入ってしまうと線毛に障害を与えることがある。予防のためのうがいはぬるま湯の方がいい」と話している。

ワクチン接種 「毎年」は1割
インフルエンザ対策
インフルエンザ対策
インフルエンザ予防のため購入した商品
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低温や乾燥から体を守り、インフルエンザを予防するグッズ
低温や乾燥から体を守り、インフルエンザを予防するグッズ

 インフルエンザ対策は予防接種が一番だが、実際に予防接種を受けている人はどれだけいるのか。共同通信が実施した「インフルエンザの予防に関する実態調査」によると、毎年定期的に予防接種を受けていると見られるのは10人に1人の割合だった。過去3年間にインフルエンザの予防接種を1度も受けていない人が約63%に達しており、インフルエンザの予防をワクチン接種に頼らない人が意外に多いことをデータは示している。

 調査は、インフルエンザの流行が始まる直前の昨年12月中旬に全国の男女200人を対象にインターネットを使って実施した。

 その結果、「この3年間に受けた予防接種の回数」を尋ねたところ、ゼロが62・5%に達し、1回が15・0%、2回が=10・0%、3回以上としたのは12・5%。つまり毎年定期的に予防接種を受ける習慣を持っているのはほぼ10人に1人の割合。また、今シーズンに予防接種を受けた人は26・0%だった。

 それでは予防接種以外にどのような予防法を実践しているのか。複数回答で最も多かったのが「せっけんや消毒剤で手洗いをする」(64・0%)、次いで「水やうがい薬でうがいをする」(59・0%)、「睡眠を十分にとる」(44・0%)、「マスクを着ける」(32・5%)、「バランスの良い食事をとる」(30・0%)、「水分を多めにとる」(25・5%)の順だった。

 さらに、今シーズンのインフルエンザ対策グッズとしてはマスク(32・5%)、うがい薬(18・5%)、手指用の消毒剤(15・0%)、加湿器(7・5%)、空気清浄機(6・5%)を既に購入、または購入を考えていることが分かった。

線毛機能維持にイオン飲料効果

 冬季は乾燥しやすく屋外の気温も低いことから、室内の温度を暖房で上げると極端な乾燥状態になる可能性が高い。こうした環境は線毛運動に大きな影響を及ぼしてしまうという。線毛運動機能をどうしたら維持できるのだろうか。

 ある大手製薬会社の研究所で実施した興味深い実験がある。健康な成人男性14人に室温23度、湿度10%の人工気象室に入ってもらい、鼻の粘液線毛機能の変化を観察した。(1)何も飲まない(2)ミネラルウオーターを飲む(3)ナトリウムなど電解質を含んだイオン飲料を飲む―で比較した。

サッカリンテスト
サッカリンテスト

 鼻の粘膜に付着させた人工甘味料のサッカリンが、粘液線毛機能によって運ばれ喉に達して甘みを感じるまでの時間の変化率を測定したところ、人工気象室で2時間過ごした場合、イオン飲料を飲んだ場合の低下が10%だったのに対し、何も飲まない場合は約40%も低下。鼻の粘液線毛機能の低下は(1)飲まない(2)ミネラルウオーター(3)イオン飲料―の順番になった。

 イオン飲料の摂取によって体の保水力がアップした結果、粘液線毛機能を維持しているらしいことが分かってきた。

 乾燥状態では、体の水分が失われやすい。このため線毛を覆っている外層粘液の水分が減少してねばねば度が増したり、線毛間液が少なくなったりしてしまう。その結果、線毛の運動が障害されたりして、粘液線毛機能が低下しているらしい。

 粘液線毛機能を低下させないためには、水分を上手に補給する一方、暖房の効いた室内であれば加湿をして鼻や喉の乾燥を抑えるよう心掛けることが、大切なことを示している。

(2013/1/15)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。


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