
井原市民病院の新院長に7月、前福山市民病院副院長の山田信行医師(61)が就任した。医師確保や病院の経営改善など課題が山積する中、福山市民病院の救急救命センター設立に尽力するなど豊富な経験を持つ山田院長に、地域医療の充実に向けた方向性や今後の病院経営などについて聞いた。
―地域医療の現状をどう見るか。
地方はどこも医師が不足し、地域医療は崩壊の危機に直面している。立て直すには大変な労力が必要だが、根本の原因は医師の絶対数の不足にある。井原市民病院の規模に応じた必要医師数は14・8人だが、常勤医師9人と非常勤医師で対応しているのが実情。医療の細分化・高度化も医師不足を助長している。例えば、内科だけでも循環器や呼吸器など専門分野が分かれており、高度な医療機器を扱うには専門のスタッフも必要だ。
―地域医療の充実をどのように目指すか。
周辺市町村と連携し住みよいまちづくりを目指す国の定住自立圏構想に基づき、備前市と兵庫県の赤穂市、上郡町が医療、経済面で連携した取り組みを進めている。井原市の場合、生活圏の結びつきが強い福山市との連携は欠かせない。行政的な枠組みを超え、井原、笠岡市を含めた広域的な医療体制の整備が理想。一方で、介護体制の整備も必要。施設に入所できず在宅ケアも困難で、入院を余儀なくされている人をどうするのか。それぞれの医師会や県、市、議会などが一体となって保健、医療、福祉のトータルケアに取り組む必要がある。
―井原市民病院では、4月から皮膚科が新設された一方、産科の休診が続くなど医師不足は深刻だ。
医師が見つかれば産科が再開できるように設備は整えているが、産科医が1人いればできるものではない。お産には最低3人の医師が必要だが、救急救命センターがある福山市民病院ですら産科が休診中と、現状は非常に厳しい。岡山大への派遣要請を続けたり、医師の登録バンクで募るなどあらゆる手段、人脈を尽くして探しているが、確保は難しいといわざるを得ない。
―赤字が続く病院の経営効率化も求められている。
収入を上げるための方策の一つが、病床の回転率向上。地域のかかりつけ医からの紹介患者を受け入れ、症状が安定すればかかりつけ医や在宅へ戻す、あるいは、危機的な状況を脱した3次救急病院からの患者を受け入れ、安定後に地域へ戻すといったサイクルを確立させ、病床の回転率を上げねばならない。
―就任式で職員へ「行動し、考える医療」を呼び掛けた。
中規模の自治体病院は今後、独自色を持たないと生き残れない。まずは、職員の意識改革。今までのやり方はこうだが、こうした方がよいのではと知恵を出し合い、コミュニケーションを密にしてほしい。一人が100歩を踏み出すのではなく、100人が一歩進むやり方だ。患者とのコミュニケーションも忘れてはならない。医療者と患者の心が通じて初めて質の高い医療が成り立つ。さらに関係機関や住民との連携、協力も必要。地元の医師会の皆さんと競合しない形で運営し、ともに地域医療を充実させたい。
やまだ・のぶゆき 旧落合町(現真庭市)出身、岡山大医学部卒。国立岩国病院、米・南フロリダ大勤務などを経て1988年から福山市民病院勤務。2002年から10年3月まで同副院長。専門は循環器内科。
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