
移植を通じ、見ず知らずの人たちと縁がつながり、交友の歯車が回り始めた。
2009年11月28日、岡山県立美術館(岡山市北区天神町)で開かれたチャリティーコンサート。シャンソン歌手佐川由紀子さんが「百万本のバラ」や「枯葉」、「千の風になって」などをしっとりと歌い上げた。
バックを務めたピアノの 上里 ( あがり ) 知巳 ( ともみ ) さんはブラジルで腕を磨いたベテラン。チェロの諸岡由美子さんは映画「おくりびと」の演奏シーンにも出演した若手実力派。満員の聴衆を楽しませてくれた。
休憩時間に「岡山肝移植交友会」の設立を呼びかける機会をいただいた。私がやぼなあいさつをするよりも、適任者がいる。岡山市立岡山中央小6年生だった阿部磨呂君。08年5月ごろ、移植後の一般病棟で共に闘病した私の小さな友達だ。
彼はぐんぐん元気になり、病棟を駆け回っていた。当時は回復ぶりに勇気づけられると同時にうらやましくもあったのだが、内実はとても苦しかったらしい。200人を前に発表した彼の体験談を読んでいただきたい。
僕は生まれつき、胆道閉鎖症という病気で、赤ちゃんの時に手術をしました。手術をしても、胆管炎や、食道静脈 瘤 ( りゅう ) ができて、吐血や下血で入退院を繰り返していました。
4年生の冬、吐血をした後、下血が止まらなくなりました。腹水もおなかがはちきれるくらいたまり、歩くのも困難でした。
輸血も何度もしました。そして08年4月24日、5年生の春に肝移植をしました。
手術の前日は不安と怖さで眠れませんでした。手術室に入る時は、家族と、10年前に外国で肝移植をしたお姉さんが見送ってくれましたが、涙が止まりませんでした。
この時、お母さんの目にも涙が見えました。今まで病気の事で泣かなかったお母さんが泣いていたので頑張ろうと思いました。でも本当は不安でいっぱいでした。
手術後のICU(集中治療室)では昼か夜かわかりませんでした。機械の音が鳴り響くとおかしくなりそうでした。その時の事を思い出すと胸が苦しくなりますが、今はこんなに元気です。
移植をすれば完全に元気になると思っていたけど、今でもよく腹痛が起こります。腸が癒着しているからだそうです。
学校でも痛みがでます。そんな時、僕には言葉に出さなくても体調の変化に気づき、声をかけてくれる友達や先生がいます。肝臓移植の説明本まで読んでくれて、今でも助けてくれる友達がいます。この移植で僕の事を分かってくれる人が増えました。
僕は今でも人の助けが必要です。同じような悩みを相談できる所はないかと思っていたら、移植の会ができると聞いてとてもうれしかったです。
このコンサートのお金の一部が移植の会を支えてくれるそうです。本当にありがとうございます。これからも頑張るために皆さんの力を貸して下さい。
…当日は聞いていて、うるうるが止まらなくなった。阿部君、ありがとう。
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55 見えない壁 手術機に看護師転身 
54 マスカットの会 悲喜共有目指し始動 
53 小さな友達 感動の体験発表 
52 出会い 患者支援で慈善公演 
51 1級障害者 薬飲まねば肝臓廃絶 
50 自戒の輪 腹水解消も服薬続く 
49 ステント 肝静脈支える金剛杖 
48 袋小路 血管内手術繰り返す 
47 胆汁漏れ ほころび見つけ治療 
46 PET リンパのがん化疑う 
45 簡易無菌室 骨髄穿刺におののく 
44 再入院 白血球減り再び腹水 
43 家庭内「隔離」 特別扱い 不満募らす 
42 ムンテラ 100点目指さず退院へ 
41 バルーンカテーテル 「血管ナビ」で患部へ 
40 ミクロの決死圏 SF世界の手術現実に 
39 最大のピンチ 腹水漏れ血管造影 
38 過小グラフト 再生しながら重労働 
37 薬のデパート 10種類服用で“満腹” 
36 一般病棟へ 点滴刺し替えに難渋 
35 森田院長インタビュー 数こなし「臨床力」を 
34 大遠征 一般病棟の弟見舞う 
33 胆道閉鎖症 「みとり」考えたくない 
32 8100ミリリットル ICU脱出阻んだ腹水 
31 パルス 拒絶反応を未然回避 
30 レビンチューブ 解放後食事し生実感 
29 コード人間 絡まり寝返り打てず 
28 どんでん返し がん 間一髪で血管外 
27 パンドラの箱 希望与えた基準変更 
26 ミラノの壁 手術阻む8センチのがん 
25 クリスマスの誓い がん再発「後悔ない」 
24 長い長い闘い つらいC型肝炎治療 
23 デンバーシャント 想定外の「最終兵器」 
22 新世界より 目覚めは第2誕生日 
21 出血との闘い 血液を総入れ替え 
20 血管吻合 超繊細な針仕事 
19 グラフト 命つなぐ339グラムの左葉 
18 執刀 重い役割担う麻酔医 
17 手術台 麻酔直前またサイン 
16 IC “神の摂理”に背いても 
15 敵は身中にあり 頭から足先まで検査 
14 待機の日々 同僚に手術記録を依頼 
13 弟 奇跡の生還思い返す 
12 社会的な死 「苦悩」分かち合う 
11 大病人 「重篤」の現実自覚 
10 ナッシュ 油断できない脂肪肝 
9 保険適用 生存率高いと無理? 
8 ドナー希望 両親の申し出拒む 
7 遠い世界 手術考えないと主張 
6 難治性 腹水穿刺に涙こぼす 
5 食道静脈瘤 “爆弾”抱え 戦々恐々 
4 暗澹たり 回復不能の「肝硬変」 
3 カエル腹 腹水たまり 体重が急増 
2 まさか 日本初を取材 18年後自ら 
1 二つの手術室 刻まれた「ベンツ紋章」 
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